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島野理事長の対談

利用者の視点に立ち、安心・安全を追求した自転車選びの新しい基準について、(社)自転車協会理事長で(株)シマノ代表取締役会長である島野喜三氏に、福島敦子さんがお話を伺いました。

島野 喜三(しまの よしぞう) (社)自転車協会理事長 (株)シマノ代表取締役会長

昭和9年生まれ。シマノ・アメリカン・コーポレーション取締役社長、(株)シマノ代表取締役社長を経て現職。

福島 敦子(ふくしま あつこ) キャスター・エッセイスト

メディアを通じ数多くの企業経営者を取材。経済、環境、地球再生、農業、食など幅広い分野で活躍。最新刊は、苦境を乗り越え成功を手にした9人の経営者の軌跡を描いた『それでもあきらめない経営』。

自転車はもっとも身近で安全な乗り物

自転車はとても身近で、長くつきあえる乗り物ですが、島野理事長は自転車の魅力をどうお考えですか?
風をきって走る爽快感。そして、ゆっくりと長い時間景色を楽しめるということ。すばらしい景色も自動車ではすぐに走り過ぎてしまうし、ウォーキングでは距離が限定されてしまう。その点自転車ならば、数倍の距離を楽しめます。自転車先進国、オランダなどは羨ましいほど自転車の利用環境が整備されていましてね。たとえば道路は歩行者用、自転車用、自動車用と3つにわけられていて、信号機もそれぞれにある。しかも自転車用の道は3人位併走できるほどゆったりとしているんです。
専用道路とは、本当に羨ましい。海外では通勤に自転車を利用される方も多いようですね。
米国のサンフランシスコ郊外などでも自転車通勤は実に盛んです。バスに自転車を積めるなど、自転車を使いやすい環境が整っています。オフィスには駐輪場があり、シャワーもある。またドイツには大気汚染をできるだけ防ごうということで、街ぐるみで自転車を使っているところがあります。たとえばよその町から電車でやって来た人は、まず駅の駐輪場へ直行し、そこでレンタサイクルに乗り換えて目的地へ行き、用事を済ませた後は駅で自転車を返却して電車に乗って帰途につく。海外でこのような町を見ると、日本にはこれからやるべきことがたくさんあるなぁと感じます。

安全なを第一に「粗悪な自転車」にサヨナラを

現在、日本ではどのくらいの自転車が販売されているのでしょうか?
2001〜2003年まで3年間連続で毎年約1,100万台売れています。しかし、98年以前の10年間は、毎年800〜850万台でした。
ずいぶんと増えたのですね。
90年のガット東京ラウンドで、自転車及び自転車部品は関税がゼロになった。このような例は世界でも日本だけなのですが、このために輸入自転車はだんだんと増加し、残念ながら最近では粗悪な自転車もかなり市場に出てくるようになりました。寿命が短くなった自転車はやがて廃棄自転車となる。本来、健康的で環境に優しいはずの自転車ですが、 捨てられてしまえば社会問題にもなり、誠に残念です。
粗悪な自転車による品質の低下が自転車事故の増加にもつながっているようですね。
残念ながらそうです。昨年、自転車の品質確認のために50台を試買テストしたのですが、合格したのはわずか2台でした。今後も試買テストは継続し、その結果 は公開する予定です。また、日本の品質基準にはJISがありますが、消費者の視点に立った自転車の安全基準が存在しなかった。これは先進国の中では日本だ けでした。そこで私ども(社)自転車協会では、2年半前に安全基準を作らせて頂きました。

利用者の視点に立った新しい安全基準

その安全基準とはどのようなレベルなのでしょうか?
「自転車安全基準」は、JISをベースに、粗悪自転車による自転車事故事例などを基に、消費者の安全を第一に考え、安全性の向上と環境保全を目的としています。そしてこの度、同基準に適合した自転車にBAA(自転車協会認証)マークを貼付し、消費者に“安全で長持ちする環境に優しい自転車"をアピールし、普及させることを目標に、2004年9月より国内市場へ供給を開始します。無 論これは強制的ではなく自主的なもの。(社)自転車協会会員だけでなく、非会員の方にも門戸を開いています。
新しい安全基準を満たしているかどうかを、私たち消費者はどのように見分けることができるのでしょうか。そして、BAAマーク貼付自転車のメリットは何ですか。
サドルのすぐ下、立パイプの前側に『BAA安全基準適合車』というマークが貼られています。番号で製造事業者や輸入事業者がわかるので、万一事故が発生した場合にもトレーサビリティが非常に高い。それにもまして一番大切なことは、消費者の安全を確保すること。そして、環境保全。安心・安全な上に、丈夫で長持ちする自転車を消費者に供給することが私たちの使命です。
新しい安全基準を満たしているかどうかということは、どのように審査されるのですか?
BAAマーク制度の審査を希望される場合、まずは(社)自転車協会に書類とともに自転車を提出していただきます。その自転車を(社)自転車協会が委託している(財)日本車輌検査協会または(財)自転車産業振興協会技術研究所で検査 した後、合格したモデルに対しては、BAAマークの使用を許可します。
自転車メーカーの反応はいかがですか?
非常に積極的かつ前向きに取り組んで頂いております。安全基準の立案段階から多くのメーカーにご参加頂いておりますし、消費者の安全性を確保するためということで、理解度は高いですね。これで国及び自治体の方も自転車との共生へ向かって環境づくりに取り組んで頂けば、世界一長寿の日本人が、もっと健康で長寿になれるのではという夢もあります。
安全性をしっかりと確保した上で、よりレベルの高い次元でメーカー同士がいい競争をしていくということですね。もし、BAAマークのついた自転車に何か欠陥が見つかったり、欠陥によって事故が起こってしまったという場合にはどのように対処していただけるのですか?
即座に製造または輸入事業者が責任を持って対処することになっています。BAAマーク貼付にはPL保険への加入も条件となっていますから安心です。

人と環境にやさしい自転車の普及をめざして

今後のBAAマーク制度の広報展開はどのように進められるのですか?
来年3月にかけてテレビ・新聞・雑誌での広告、専用ホームページ、販売店の店頭ツールなど、多くの人に知っていただけるよう予算約10億円を投じてキャンペーンを行っていきます。具体的には、今年度は広報活動を3段階に分けています。第1期(8月まで)は、主に販売店の皆様に本制度を理解していただく準備期間として、新聞・雑誌広告に加えて販売店向けパンフレット等を作成し、配布します。第2期(9〜12月)は、主に消費者の皆様への認知獲得期として、消費者向けに新聞・雑誌広告をスタートします。第3期(05年1月〜3月)は、消費者の皆様への本格的な広報をテレビ・新聞・雑誌などを通じて展開します。そしてできるだけ多くのBAAマーク付自転車をお求めいただけるよう皆様のご理解・ご協力をお願いしたいと考えます。
ところで安全性というのは最も重要なことであるにもかかわらず、判断する基準がありませんでした。ですからBAAマークというのは、消費者にとって安全性を確かめるためのよい判断材料になるわけですね。
まったくおっしゃる通りです。
自転車というのはやはり命を預ける乗り物のひとつ。私たちも初心に戻り、安全性最優先で自転車を選んでいくべきですね。BAAマーク制度を機に日本中の自転車が安全性を保証された高品質のものになることを願っています。
ありがとうございます。BAAマークの認知度が高まり、安全につながっている自転車だということで、「購入するならBAAマークの自転車」と皆様に考えて頂けるよう、強く願いながら推進してまいります。
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